犬の膵炎

お家のわんちゃんが突然何度も嘔吐をして、元気がなく、食欲もないなんてことが起きたら、もしかしたら膵炎になってしまっているかもしれません。

膵臓は、炭水化物、脂肪、たんぱく質を消化する膵液を分泌します。

この膵液は膵臓の中では消化する機能を持たず、十二指腸に分泌されてから活性化します。したがって、膵臓内で自分自身を消化してしまうということはありません。

しかし、様々な原因によって、膵臓内で活性化してしまうことがあり、その場合自己消化を起こしてしまいます。これが膵炎です。

急性膵炎のわんちゃんは、多くが突然の食欲減退嘔吐の症状がみられます。下痢血便がみられることもあります。また腹痛のために伏せの状態でお尻の方をあげる姿勢(祈りのポーズ)や体を丸める姿勢をすることもあります。

膵炎が起こる原因には、高脂肪食人の食べ物肥満副腎皮質機能亢進症甲状腺機能低下症などのホルモン疾患などが考えられています。

膵炎の治療はしばらく膵臓を休ませるためにごはんをあげずに、点滴をして注射を打って治していきます。そして食事をとることが可能になってきたら、食事管理が大切で、低脂肪食与えていきます。

お家のわんちゃんが嘔吐や下痢で体調が悪くなってしまった場合は、なるべく早く動物病院に相談してください。また膵炎にならないように、高脂肪の食事や肥満には注意して、食事管理をきちんとやってあげましょう。

お口と歯のお話

 

おうちのわんちゃん、ねこちゃんのお口の臭いが気になること、ありませんか?

またよくお口をくちゃくちゃさせていたり、手で気にしている様子はありませんか?

 

人で定期的に歯医者さんに行って、歯のケアをしてもらっている方も多いと思います。わんちゃんの場合、ケアをしようとしても、お口周りを触られるのを嫌がったり、人と同じような日頃のケアをするのは難しいですよね。

 

わんちゃんやねこちゃんも、人と同じように歯垢が付き、歯石に変わります。歯垢は3~5日で歯石に変わると言われており、歯石に変わってしまうと歯みがきや歯みがきガムでは取り除くことができません。

歯石が付くと臭いだけでなく、歯茎に炎症が起きて歯茎が腫れてきます。歯周病や、その炎症から下顎の骨が折れたり、顔が腫れたりと、一見歯が原因と分かりにくい病気を引き起こしたりもします。

 

歯垢や歯石を取り除いた後、歯の表面を滑らかに磨きます。スケーリングした後は、綺麗な歯になり、歯茎の炎症も治り、臭いもかなり減ります。

 

犬用の歯みがきペーストや歯みがきガムなど、日頃からケアできるものもあるので、気になる方は当院のスタッフに相談してみてくださいね。

内視鏡による異物摘出

今回は内視鏡を使った異物摘出について紹介したいと思います!

散歩していたら道端に落ちているものを食べちゃった、おもちゃで遊んでいたと思っていたら・・などの経験はないでしょうか?小さいものであればウンチにそのままでてきますが、大きいものや針・紐などはそのままにしておくと胃や腸につまってしまい大変です。

詰まってしまった場合はまず薬で吐かせるようにしますが、吐いてもでてこない場合は手術でお腹を開ける・内視鏡を使って取り出す方法があります。

内視鏡を使うことのメリットとしてはお腹は開けずに口から管を入れるだけなのでわんちゃんにとっての負担が少ないことが挙げられます。また胃・腸の内部の構造もしっかりと観察することができます。

図4図2
黄色で囲んだ所が胃です。

前日からご飯を食べていないにも関わらず

胃の中に物が入っています

おもちゃのロープを食べてしまったたわんちゃんです。小さい子でしたがこんなにたくさんロープを飲み込んでいました。内視鏡で無事に全部取り除くことができました。

内視鏡で取り除けなかった場合はお腹を開くことになります。予防としては飲み込めそうなものをわんちゃんの周りに置かないことが第一です。万が一飲み込んでしまった場合はすぐに病院に連絡してください。

毛包虫症

今回は、毛包虫症と呼ばれる皮膚病についてです。

この病気の主な症状は、丘疹(湿疹)や紅斑に始まり、悪化してくると脱毛も起きてきますが、痒みを伴わないことが多いのが特徴です。
この病気の原因は毛包虫(ニキビダニ)と呼ばれる、毛穴に寄生してフケや皮脂を食べる寄生虫です。

毛包虫は常在生物と呼ばれ、ワンちゃんの皮膚にもともと少なからずいるものです。
そのため、同居のワンちゃんがいても、感染してしまうということはほとんどありません。
しかし、まだ幼いときや、何らかの要因によって免疫力が低下してしまうと発症し、その発症機序から再発の可能性が高い病気と言えます。

図1 図3
 毛包虫(矢印)  皮膚病変(左後ろ足)
脱毛と発赤が認められました

この病気により、二次的に細菌性の皮膚炎などになってしまうケースも多々あります。
またその他にも、皮膚病は見た目ではなかなか区別することが難しく、同居のワンちゃんにも感染してしまう皮膚病もあるので、ワンちゃんの皮膚に気になることがあれば、一度病院に行ってみましょう。

甲状腺機能亢進症

高齢のネコちゃんで、最近ご飯をよく食べるのに体重が痩せていくなぁ、性格が少し荒っぽくなってあちこち活発に動くようになったなぁ・・・など、思い当たる節がある方は要注意です。

名前の通り、この病気は甲状腺ホルモンが多く作られてしまう病気で、さまざまな症状をひきおこす病気です。先ほど述べた症状だけでなく、2次的に心筋症や腎不全、高血圧症までもひきおこす可能性もあります。

診断としては、血液検査に甲状腺ホルモンの測定を行い、基準値をこえていると甲状腺機能亢進症と判断します。

治療としては大きく分けて2種類あり、長期的に内服薬を飲み続ける治療と、甲状腺そのものを外科的に摘出する方法があります。
(大学などの専門病院では放射線治療なども選択肢としてあります。)
内科的療法ではまず、甲状腺ホルモン産生を抑える薬を開始し、定期的な血液検査によってホルモンの数値をモニタリングしていきます。その際、甲状腺ホルモンが正常であっても腎不全の悪化や、薬自体の副作用(嘔吐など)の危険性があるため、慎重に経過をみる必要があります。
外科療法では患者の性格上、経口投与が困難な場合に選択されることがあります。またその際、全身麻酔での手術になるため、患者の年齢や一般健康状態なども考慮しなければなりません。

このように甲状腺機能亢進症は、この病気ひとつ治せばいいという病気ではなく、ホルモンに関連した様々な病態を考慮していく必要があるため、難しいと思われるかもしれませんが、しっかりと経過をモニタリングすることで治療できることができる病気です。

自宅で心当たりがある子はもちろん、高齢のネコちゃんは1年に1度の血液検査をおすすめします。

 

歯の病気(口臭)

最近、うちの子の口が臭い…ということはないでしょうか?
そういう子はちょっと口の中をのぞいてみましょう。
口臭の原因の一つてして、「歯石」があります。これは犬歯や臼歯の外側の部分に付着していることが多く、一度付着してしまうと歯磨きのような日常ケアでは取り除くことができません。

そして、ワンちゃんやネコちゃんは、「お口開けててください」と言っても、開けててくれることはやっぱり難しいので、もしも歯石を取り除こうと思ったら、全身麻酔をかけての処置になってしまいます。

たかが歯をきれいにするだけで全身麻酔なんて…と思われる方もいるのではないかと思いますが、ではこの歯石、放っておいたらどうなるでしょう?

歯石の中には食べカスのほかにたくさんの細菌が含まれます。そして歯石の上には新しい歯石が付着しやすく、歯ぐきに炎症を引き起こしたり、歯石が重度に付着してしまうと歯ぐきが痩せてきて、歯石除去をしても歯が抜けてしまうケースも多く見られます。
また、歯は目や鼻と非常に近い位置にあり、炎症が広がっていき顔が急に腫れたり鼻水が出たりすることや、目の下に穴が開いてしまうこともあります。

歯石01歯石02 歯石03
重度の歯石付着例(クリックして画像拡大)

 

こうなってしまうと結局全身麻酔をかけて歯を抜いてしまうことが必要になります。

そうなる前にできること、それは、日ごろからのデンタルケアにより、できるだけ歯石が付着しないよう予防することです。

ワンちゃんやネコちゃんは口を触られることを嫌うコも多く、歯磨きなんてできない…という方も大勢いるのではないかと思いますし、また歯磨きはさせてくれるけど、歯磨きをしてあげてても口臭が一向によくならない…という方もいるのではないかと思います。
そういった場合は、そのコに合ったデンタルケアをしてあげるために、一度ご相談いただければと思います。

 P1050079  P1050085
スケーリング(歯石除去)実施前 スケーリング実施後
(歯の裏側もこのあときれいにしました)

 

犬の精巣腫瘍

去勢していないわんちゃんに起こる可能性のある精巣腫瘍について今回は取り上げたいと思います。

精巣が腫瘍化してしまった場合、多くの子で精巣が腫れてきたりします。

わんちゃんの精巣腫瘍には「セルトリ細胞腫」「精上皮腫」「間質細胞腫」の主に3種類があります。特に「セルトリ細胞腫」であった場合は毛が抜けたり、貧血や男の子なのに乳首が腫れてきたなどの症状がでることもあります。

精巣腫瘍になってしまった場合は基本的に手術で腫瘍化した精巣をとりますが、悪性の腫瘍であった場合やお腹や胸に転移していると手術でもとりきれないことがあります。

 

198_9688_20121016145320.0198_9672_20121015170748.01

左)摘出した精巣腫瘍

右)手術前のレントゲン(黄色の丸が腫瘍)

 

 

198_9689_20121016145308.0 198_9685_20121016151422.0

左)腫瘍化した精巣

右)反対の精巣

 

 

 

わんちゃん・ねこちゃんは生まれてすぐの時には精巣は陰嚢の中ではなく、まだお腹の中にあります。わんちゃんなら正常であれば生後30日後くらいから精巣が陰嚢内に降りてくるようになっています。しかし時々、大人になっても精巣が陰嚢内に収まっておらず、お腹の中や皮膚の下に留まってしまっているままの子がいます。これを「陰睾」または「潜在精巣」というのですが、この陰睾になってしまった精巣は精巣腫瘍になる確率が高いです。お腹の中にある精巣が腫瘍になってしまった場合は腫瘍が大きくなってきても分からないことが多いです。

精巣腫瘍の予防は何と言っても若いうちでの去勢手術です!特に「陰睾」になってしまっている場合は腫瘍になってしまう前に早めに去勢手術によって精巣を取ることをおすすめします。

最近、「睾丸が腫れてきた」・「大人になっても陰嚢内に睾丸がない」などがあればお早めに当院にご相談下さい。

白内障

今回は、飼い主様にもなじみのある方が多い、白内障についてです。

白内障とは、目の中の水晶体という部分が、様々な原因によって白く濁った状態を言います。

白内障になる原因の多くは、加齢によるもの(加齢性)と、犬種によるもの(遺伝性)です。
しかしその他にも、水晶体への直接的な衝撃によるもの(外傷性)、糖尿病などの内科的な疾患から生じるもの(代謝性(ワンちゃんで多いです))、他の目の病気から生じるもの(続発性)などがあります。

白内障2 P1140037
加齢性の白内障 外傷性の白内障(左眼)

では白内障とは、目のどのような変化なのでしょうか。
水晶体は、水分とたんぱく質で構成されています。
白内障は、このたんぱく質に不可逆的な(一度起きると元に戻らない)変化が生じることで起きます。
そのため、一度起きてしまった白内障を「治す」ためには、手術が必要になります。
しかし、加齢性に起きた白内障は、一般的に手術をしないことがほとんどです。

ここまでの話だけでは、「治すことは出来ないし、年齢のせいならしょうがない!」
と思う方もいるかもしれません。

しかし、白内障をしょうがないものだとそのままにしておくと、白内障から進行して、ぶどう膜炎や、痛みを伴う緑内障にまでなることがあります。

その進行を予防するために、「治す」わけではありませんが、「進行を少しでも遅らせる」ために、点眼薬やサプリメントを使用することもできます。

また、目が白くなる原因は、白内障だけではなく、他にもいろいろな目の病気の可能性があります。ワンちゃんやネコちゃんの目に異変を感じたら、早めに病院へ相談に来てください。

レッグぺルテス

レッグぺルテスとは大腿骨の骨頭部に壊死が起こる病気で、大腿骨頭壊死症ともいいます。大腿骨頭とは骨盤と大腿骨をつなぐ大切な股関節の一部を担っています。

この病気はまず、1歳までの若いわんちゃん多いのが特徴です。なかでも特にトイプードルなどの小型犬に多く経験します。症状として後ろ足に痛みを伴うので、足を床に着地するのを嫌がるようになります。最初は頻度が少ないですが、徐々に足を着地しないことが多くなり、なかには全く足をつかなくなってしまう子もいます。自宅でたまに足を挙げているような若い子は要注意なので一度、動物病院を受診したほうがいいでしょう。

この病気の治療は基本的に、壊死している大腿骨の骨頭を切除することです。切除しても大丈夫!?と心配される飼い主様は多いです。しかし股関節は大きな発達した筋肉があることと、時間が経つにつれて切除した骨頭のかわりにしっかりとした線維組織が作られるので、骨頭がなくなっても大丈夫です。ただ、足を長期間使っていないことで筋肉が衰えているような子に関しては正常な筋肉量が戻るまで時間がかかり、正常に歩行するまでの治療時間が長くなってしまいます。

当院では、股関節の痛みの有無レントゲン検査を併せて診断しています。
当院で実施したレントゲン写真を紹介します。

 

初診時  初診時 - コピーa
初診時

筋肉量:左足(
骨頭:正常

白マルで囲った部分が筋肉です
黄マルで囲った部分が骨頭です

 

虫食い - コピー フロッグ 編集
 1ヶ月後
初診時に比べて筋肉量が減少
骨頭部が黒く抜けている

骨頭の裏側

 

 骨頭切除後
手術後
 大腿骨の骨頭を切除した後の様子

 

 

 

 

去勢と避妊

今まの症例紹介でも何度か触れてきましたが、今回は去勢と避妊について取り上げてみたいと思います。

ではまず、なぜ去勢手術や避妊手術を行うのでしょうか?そのメリットとはなんでしょう?
一番のメリットは、女の子なら今までにも紹介してきたような乳腺ガン子宮蓄膿症といった病気の予防につながるということでしょう。ほかにも、男の子なら精巣のガン前立腺の病気、そして会陰ヘルニアという、男性ホルモンが関与している病気の予防につながります。

これらの病気の中には、命に関わってくるような病気もあります!

そして、そのほかにも、マーキングやおしっこの粗相といった問題行動の改善や、性格の穏和化といったメリットもあります。

また、当院で手術される場合、少しでも負担を減らすために、抜糸の必要のない糸で傷を縫っています。これは、とける糸で傷を縫い、外に糸が出ていないため、手術後傷を気にするコが少ないという効果もあります。

図2 図1
女の子の場合(ワンちゃん)
部分が傷です
男の子の場合(ワンちゃん)
部分が傷です

 

ただ、全身麻酔や手術は100%安全というわけではありません。
当院では術前に必ず血液検査を行い、少しでもそういったリスクを減らせるように努めています。

また、術後は代謝が落ちたりホルモンのバランスが崩れることにより、太りやすくなってしまうこともあるため、定期的に体重を測ったり、フードの量を調整したりと、しっかり体重管理をしてあげられるといいでしょう。

こういったメリットとデメリットから、手術をするかどうか、とても悩まれている方もいるかと思います。そういった方は一度動物病院へご相談いただけたらと思います。