●不妊手術について
不妊手術のメリット・デメリット
将来的に繁殖を考えていない場合には、将来発生する病気のリスクを軽減することを目的として、早い時期の不妊手術をお勧めしています。不妊手術には、望まない繁殖を防ぐ以外にも下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
避妊手術 (女の子) |
①特有の行動の減少 発情時特有の神経質な状態や鳴き声の減少、出血がなくなります。 ②病気の予防(乳がん・子宮蓄膿症) 『乳がん』初回発情前に避妊手術を行う事で99%予防できるといわれています。初回でも発生率の減少が期待できます。 『子宮蓄膿症』は避妊手術を受けていないワンちゃんが7歳以降に多く発症する病気です。 |
去勢手術 (男の子) |
①縄張り意識の減少 マーキングやマウンティング、攻撃性の減少が期待できます。 ②病気の予防(精巣腫瘍・前立腺肥大) 特に前立腺肥大症は、去勢していないワンちゃんが7歳期以降に多い病気です。 |
デメリット
共通 | エネルギー代謝が落ち太り易くなります。 ・手術前に比べ、20~30%もエネルギー代謝が落ちるといわれています。 ・食事や運動といった管理で体重を維持することが必要になります。 |
手術のタイミングについて
避妊手術 (女の子) |
生後6ヶ月程度で手術を行います。 初回の発情までに行うことが理想的です。 |
去勢手術 (男の子) |
生後6ヶ月程度で手術を行います。 性成熟がくる時期やマーキングを始める時期が生後6か月以降と言われているためです。 |
動物に負担の少ない手術を目指して~7つの取組~
1.しっかりとした手術の説明を
手術はメリットだけではありません。麻酔のリスクや、術後のストレス等のデメリットもあります。当院では手術の必要性があるときは、しっかりと説明させて頂き、ワンちゃんネコちゃんと飼い主様にとって最善の方法を一緒に考えていきます。
2.動物に「痛み」の少ない方法を
痛みを感じている動物はストレス下にあり、あまり食事をしないことによりエネルギー消費量が利用可能なエネルギーを上回ります。つまり、痛みを無くしてあげることで、傷や病気の回復が早くなるのです。 当院では手術前と手術中、術後に鎮痛剤を投与することで、「痛みのコントロール」を行っております。
3.動物に「負担」の少ない方法を
手術時にかかる動物への負担は「麻酔の時間」です。麻酔にかかっている時間が長いほど、麻酔のリスクが大きくなります。そのため、手術時間をできる限り短くすることが、麻酔の負担を減らすことに繋がります。当院では、手術時間を短縮するために、血管シーリングシステムなどの医療機器を導入しています。
4.将来を考えた術式を
手術時に腫瘍や臓器などを摘出する際には、繋がっている血管を切断する必要があります。通常はこの際に止血のために安全性の高い縫合糸を用いますが、ごく稀に身体が異物(縫合糸)に反応して「異物反応性肉芽腫」という病気を引き起こす事があります。こういった病気のリスクを無くすことが可能です。
去勢・避妊手術などが無事に終わっても、数ヶ月~数年後に手術部位付近が赤く腫れたり、おなかの中にガンのような大きなしこり(肉芽腫)が出来たり、重度の場合は皮膚に穴があいてしまうことがあります。これらは体内に残っている糸に過剰な異物反応を起こして起こる病気です。こうなった場合は肉芽腫と残った糸を摘出する再手術を行わなければなりません。この病気は事前に発生リスクが分からないため、当院では糸を残さない手術を行っています。
5.万が一に備える体制を
手術はどんなに安全な方法で行っても、万が一の可能性があります。その場合に備えるため、手術中の生体管理では機械のよる管理はもちろん、複数人での人による管理も行っています。
また、術後管理においても、動物が飼主様の元へ元気になって帰っていくまでが手術です。そのため、手術直後のICUによる術後管理はもちろん、術後の飼主様へのご説明、手術数日後までのアフターケアなど、最後までしっかりと行うことが、動物病院としての責任であると考えています。
6.安心の術前検査を
当院では安心して麻酔や手術を受けていただくために、術前検査をお勧めしております。血液検査・レントゲン検査を基本として、年齢に応じた検査内容を追加して行います。
術前検査の実施により、麻酔や手術中の急変や、術後の経過不良などを起こすことを事前に察知することができ、より安全な手術が実施出来ます。
7.安全な環境整備を
手術室はもちろん、全室を清潔で安全な環境作りのために、消毒・滅菌などの院内感染予防を徹底しています。当院では院内全室を消毒液などで日々清掃を行い、安全な環境作りのために消毒・殺菌処置を行なっています。