猫の消化管腫瘍(リンパ腫)②

前回、腸に腫瘍が見つかった猫ちゃんですが、その後繰り返しの嘔吐症状がみられ、食欲も落ちてしまいました。

本人の状態改善・腫瘍の診断も含めて手術を行うことになりました。

 

以下、手術中の写真がでてきますので注意してください。

お腹を開けて腸を出したところです。腸の部分から大きな固い腫瘍が発生していました。



腫瘍が発生した部分の腸を腫瘍ごと切除しました。

 

腫瘍を切除したあとは正常な腸同士をつなぎ合わせて縫合します。

 

 

 

手術後は吐くこともなくなり、食欲もでてくれました!

 

切除した腸を病理検査にだしたところ「リンパ腫」という悪性の腫瘍でした。

リンパ腫は血液の一部である「リンパ球」がガン化したものです。本来は針の検査(細胞診)で診断がつきやすい腫瘍ではあるのですが、この子の場合は腫瘍周囲での炎症が強かったため細胞診では腫瘍本体の細胞が採取できなかったと考えられました。

リンパ腫は「血液のガン」なので腫瘍が切除されていたとしても、再発を防ぐために術後は抗がん剤治療が推奨されます。

この猫ちゃんも術後の体調が落ち着き次第、抗がん剤をはじめることになりました。

 

猫ちゃんのお腹の腫瘍は飼主さんが気づかないことも多いですが、大きくなると触診でもわかることがあります。

中高齢の猫ちゃんで最近吐くことが増えた・よく下痢をする・痩せてきてしまったなどの症状があれば早めに病院にかかりましょう。

 

獣医師:清水

 

 

猫の消化管腫瘍(リンパ腫)①

久しぶりの更新となってしまいまして申し訳ありません!

3-5月はワンちゃんのフィラリア予防と狂犬病接種の時期が重なって病院が混む傾向にあります。

6月は比較的混雑が解消されますので、猫ちゃんも含めて日常ケアや健診など気軽に来ていただければと思います。

 

今回は猫ちゃんの腸にできた腫瘍を切除したので解説させていただきます。

猫の腸にできる悪性腫瘍で多いものは「リンパ腫」と「腺癌」です。症状としては嘔吐・下痢などの消化器症状が多いですが、無症状な場合もあります。

猫ちゃんは健康なときでも吐くことがよく見られる動物なので飼主さんが気づきにくく、健康診断などで偶発的に発見される場合も多いです。

 

今回の猫ちゃんは少し前から食欲が落ちているという症状で来院しました。超音波検査をしたところお腹の中に腫瘍ができているのがみつかりました。

 

CT検査を行い、どこから腫瘍が発生しているのか・癒着具合はどうなのかを精査します。

↑↑ 黄色で囲んだところが腫瘍です。

 

腫瘍に針を刺して検査をしましたが、炎症細胞しかとれなかったため腫瘍の特定はできませんでした。このような場合は、腫瘍の特定・治療として外科手術が推奨されます。

 

獣医師:清水

 

 

 

 

犬の消化管腫瘍②

針を刺す検査では診断がつけられませんでしたのでお腹をあけて手術することになりました。

 

以下、手術中の写真がでてきますので、苦手な方は注意してください。

 

 

 

↓↓

お腹をあけたところ腸の部分に固い腫瘍ができているのが確認されました。

 

 

 

腫瘍ができている腸ごと切除して、正常な腸同士を繋げました。

 

 

切除した腫瘍の部分です。

 

 

切除した腫瘍を病理検査に出したところ「未分化肉腫」との診断でした。

「未分化」肉腫のためどこの組織が元となって発生したのかはわかりませんでしたが、病理検査では腫瘍は取り切れているとの結果でした。

術後は定期的な血液検査・超音波検査で再発がないかチェックしていきます。

 

獣医師:清水

犬の消化管腫瘍①

犬の小腸に発生した腫瘍について今回は執筆させていただきます。

犬の小腸に発生する腫瘍として一番多いものは腺癌、次にリンパ腫が多いです。他にも平滑筋肉腫、平滑筋種、消化管間質腫瘍(GIST)などがあります。

消化管にできる腫瘍の多くが、治療の第一選択は手術になることが多いです。ただし、例外として「リンパ腫」に関しては抗がん剤が良く効くタイプの腫瘍のため、抗がん剤治療がメインになってきます。

 

消化管に腫瘍を見つけた場合、まずは超音波を使ってお腹に針を刺して細胞をとってくる細胞診という検査を行いどういう腫瘍が疑われるかを調べます。

 

今回の子はもともと下痢気味の症状が続いていましたが、最近下痢の頻度が増えてきたということで来院し、検査をしたところ腸に腫瘍がみつかりました。

 

 

超音波ガイド下で針をさしましたが、診断につながるような腫瘍の細胞はとれませんでした。

そのため、診断・治療をかねて外科手術にて切除することにしました。

(②に続きます)

 

獣医師:清水

 

 

犬の肥満細胞腫

犬の皮膚の下にできた肥満細胞腫を手術しましたので紹介させていただきます。

肥満細胞腫はわんちゃんの皮膚にできることが多い悪性腫瘍ですが、見た目は小さくそこまで悪いように外観をしていないこともあります。

この子は右後ろ足に柔らかいしこりがあるのを飼主さんがみつけました。しこりに針を刺したところ肥満細胞腫という悪性の腫瘍が疑われたため、手術することになりました。

 

肥満細胞腫の治療は手術が第一選択になりますが、注意しなければいけないのが手術の切除範囲です。悪性度が高いほど周囲への組織へのガン細胞の浸潤が起こりやすいため、悪性度が高い可能性を考慮して広く切除することが一般的には推奨されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、手術の写真があります

 

手術前に毛刈りを飼った状態です。内側の黒い円の範囲が腫瘍になります。外側の円は手術で切除する範囲です。

 

 

 

手術後の写真です。切除範囲を広めにとりしっかりと切除しました。

 

腫瘍の病理組織学的検査の結果はやはり肥満細胞腫でした。検査の範囲では腫瘍は取り切れていたため経過観察としました。

 

 

獣医師 清水

 

 

 

犬の肝臓腫瘍

今回は、犬の肝臓にできた大きな腫瘍を手術したので紹介させていただきます。

 

以前から定期的に見ていた血液検査で肝臓の数値の上昇がみられたので超音波・CT検査を行ったところ肝臓に8cm程の腫瘍がみつかりました。(黄色で囲んだところが腫瘍です)

 

検査の結果から悪性の可能性が考えられたので手術を行いました。

 

 

以下、手術中の写真です。

 

 

 

 

お腹をあけると大きな腫瘍がすぐにみえました。

 

 

切除した腫瘍と切除後のお腹の画像です。肉眼的にしっかりと切除できました。

病理検査の結果はやはり悪性の「肝細胞癌」でしたが、しっかり取り切れているとのことでした。

この子のように塊で出来るタイプの肝細胞癌は完全切除ができた場合の予後は比較的良好であることが多いです。

 

肝臓は腫瘍ができたとしても症状がでにくい臓器ですので、中高齢になったら定期的な健康診断を受けることをおススメします。

 

 

獣医師:清水

骨肉腫の治療について①

こんにちは!前回は骨肉腫という病気の概要について説明しましたが、今回は治療についてです。

まず骨肉腫の治療の第1選択は「断脚」になります。つまり腫瘍がある部分の手足を1本丸ごと切除します。

「断脚」と聞くと飼主さん的には「足を切除するなんてかわいそう」「残った足で上手く歩けるのか心配」などといった心配もあり手術に対して抵抗を感じる人も多いと思います。

 

そんな飼主さんの不安・疑問に対して説明させていただきます。

①なぜ断脚が第1選択なの?

骨肉腫は痛みが非常に強い。。

骨を進行的に破壊していくため、他のガンより痛みが非常に強いです。強い痛みが続くことで元気食欲が低下してしまい、徐々に全身状態が悪化してしまうことが多いです。

痛み止めの薬やフェンタニルなどの麻薬性鎮痛剤で対処することもありますが、最終的にはそれらも効かなくなってしまうくらい強い痛みになってしまいます。

この強い痛みを取り除いてあげるには、断脚を行い原因となっている腫瘍ごと足を取りきるのが最も効果的な方法になります。

 

抗がん剤単体での治療はあまり効かない

骨肉腫は抗がん剤単体の治療は効果が低く、痛みをコントロールすることも難しいです。

(※断脚をした後に抗がん剤を実施することに関しては延命効果が認められています)

 

②断脚したことで日常生活を上手くすごせるか心配。。

わんちゃんは人間と違って4足歩行の動物です。

断脚を実施して3本足になった場合でも、残りの足が健康であればほとんどの子たちが1週間程で補助をした状態での歩行が可能になります。さらに1ヶ月もたてば多くの子が補助なしで日常生活に支障なく歩くことができます。

 

③3本足になってしまうと見た目が可哀そう。。

動物の場合は足がなくなった自分の姿を見て悲壮感を感じることはまれです。

人間である飼い主さんからみると可哀そうと感じるかもしれませんが、本人たちにとっては痛みの元がなくなるので「生活の質(QOL)」があがり手術前より活動的になることが多いです。

 

断脚は大きな手術になり、飼い主さんも決断に悩むことがあると思います。手術をするかしないかは飼い主さんの考え方やわんちゃんの状態にもよりますが、積極的な治療をしたい/本人の痛みをとってあげたいと思う場合は有効な治療方法です。

 

獣医師:清水

 

 

 

 

 

 

 

 

犬の骨肉腫

こんにちは。今回は大型犬の子に多い骨の腫瘍「骨肉腫」について紹介させていただきます。

 

骨肉腫は発生する場所・犬種に特徴があり、ゴールデン・レトリバー、ジャーマン・シェパード・ドッグなどの大型犬に多いです。

 

骨肉腫の75%は四肢に発生するといわれており、

・前肢のほうが多い(後肢の2倍)

・肘から遠い部位(上腕骨近位・橈骨遠位)

・通常、関節を超えて発生はしない

 

という傾向があります。

 

悪性度は高く、遠隔転移を起こしやすいため、発見時にすでに肺などに転移していることもあります。

 

症状としては、主に跛行(びっこ)で発見されることが多いです。進行すると強い痛みを伴う為、食欲・元気の低下がみられることもあります。

 

下の写真は当院で診断した骨肉腫のレントゲン写真です(左側:腫瘍側、右側:正常肢)

この子は左前肢の上腕骨に腫瘍ができていました。で囲っている部分が腫瘍によって破壊された骨の部分です。

 

 

大型犬でびっこが長く続く場合は早めに動物病院を受診しましょう!

次回は骨肉腫の治療について解説させていただきます。

 

獣医師:清水

犬の高カルシウム血症 ~続編~原発性上皮小体機能亢進症と上皮小体腫瘍

こんにちは!前回の高カルシウム血症のお話から派生して、今回は発性上皮小体機能亢進症について解説させていただきます。

原発性上皮小体機能亢進症とは、喉にある上皮小体という部分から上皮小体ホルモンが過剰に分泌されることで起こります。

上皮小体ホルモンには血液中のカルシウムを上げる作用があるので、この病気になると高カルシウム血症が引き起こされます。

原因としては上皮小体腺腫という良性の腫瘍が最も多いです。その他にも腺癌・過形成なども報告されています。

 

 

原発性上皮小体機能亢進症による高カルシウム血症が見られたワンちゃんのエコー画像です。(白矢印で示している部分が上皮小体)

別件で具合が悪くなったときの血液検査で偶然高カルシウム血症が見つかりました。

上皮小体:右側
上皮小体:左側

この子の場合は左側の上皮小体が右側より大きくなっていました。

原発性上皮小体機能亢進症の根本的治療は外科手術で大きくなっている上皮小体を切除することです。

しかしながら、術後に一時的な低カルシウム血症になることもあり、場合によってはカルシウムの管理が長期に及ぶケースもあります。

高齢・高カルシウム血症がそこまで重度ではなかったこと・無症状・上皮小体の腫大がそこまで顕著ではなかった為、まずはカルシウムを下げるお薬を飲むことによる内科療法を選択しました。

現在、飲み薬のみでカルシウムはほぼ正常範囲に維持ができています。

犬の高カルシウム血症

こんにちは!

今日はわんちゃんの高カルシウム血症の話をさせていただきます。

カルシウムというと骨を丈夫にするための重要な要素ですが、高すぎても低すぎても体に悪影響を及ぼします。

高カルシウム血症になったときの症状は食欲不振、元気消失、多飲多尿などがありますが、原因によっては全く症状を示さない子もいます。

ですので健康診断で偶発的に発見されることも多いです。

 

わんちゃんの高カルシウム血症で発生率が多いものは「原発性上皮小体機能亢進症」と「悪性腫瘍」です。

 

悪性腫瘍の場合は腫瘍本体からカルシウムを上昇させるホルモンがでることで高カルシウムになります。この場合は悪性腫瘍が原因ですのでわんちゃんは具合が悪くなることが多いです。

 

一方、「原発性上皮小体機能亢進症」の場合は「上皮小体」というカルシウムを調節する臓器の機能が働きすぎることによりカルシウム上昇作用のあるホルモンが大量に分泌され高カルシウム血症となります。この病気が原因で高カルシウム血症になっている場合は、本人の調子はそこまで悪くない・無症状であることも多いです。

 

上皮小体の機能が亢進してしまう根本的原因は上皮小体の「腫瘍化」「過形成」があります。その中でも「上皮小体腺腫」という良性の腫瘍が一番多い原因です。

次回の更新ではこの「原発性上皮小体機能亢進症」についてもう少し詳しくお話していきます!

                                    

  獣医師:清水