犬の肝臓腫瘍は全ての腫瘍のうち1.5%以下と比較的まれな腫瘍です。そのなかでも犬では「肝細胞癌」が最も多く肝細胞系の腫瘍のうち70%を占めます。
肝臓腫瘍はある程度の大きさになるまでは症状を示さないことがあるため、具合が悪くなってから・腫瘍がかなり成長した段階で発見されることもあるので注意が必要です。
進行してからの症状としては食欲低下・元気消失や腫瘍の圧迫による嘔吐/下痢などがありますが特異的な症状ではありません。
肝臓腫瘍はレントゲン・超音波検査で発見ができることが多いですが、それが悪性(ガン)なのか良性なのかを確定診断するためには手術による切除が必要です。
肝臓腫瘍が大きく、悪性の可能性も考えられる場合、当院ではまずCT検査をさせていただきます。
CT検査にて実際に腫瘍の位置・サイズ・他の部位への転移の有無・悪性の画像所見かなどを確認し、転移がなく切除可能であれば外科手術を第一選択とします。
<肝細胞癌の一例>
この子はお水を多く飲むことを主訴に来院しました。
超音波検査にて右上腹部に大きな腫瘍がみつかり、CT検査をしたところ肝臓の腫瘍が疑われたため手術による摘出を行いました。
〇で囲っているところが腫瘍の部分です。
以下手術中の画像がでてくるので苦手な方はご注意ください。
お腹の中に巨大な腫瘍が認められます。
摘出した腫瘍です。
摘出した腫瘍を外部の検査センターに出したところ結果は「肝細胞癌」でした。術後は経過観察としました。
肝細胞癌はガンの中では転移がしにくいといわれており、塊状にできていた場合に手術で完全切除ができたときの予後は比較的長生きできることが期待できます(生存中央期間:1460-1836日)。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれているように比較的病態が進行しないと症状としてでてこないことがあります。
肝細胞腫瘍はお腹が膨らむくらい巨大になることもあり、大きくなればなるほど手術のリスクも高くなるのでなるべく小さいうちに発見・治療を行うことが大切です。
当院では春と秋にそれぞれ健康診断キャンペーンを行っています。中高齢の子・シニアの子は半年~1年に1回は健康診断を受けて病気の早期発見につなげましょう。