今回は犬の甲状腺腫瘍について紹介したいと思います。
甲状腺とは気管の両側にある内分泌腺です。主に体の代謝を促進するためのホルモンを分泌します。
甲状腺の腫瘍の発生率は低いですが、そのほとんどが悪性に分類される甲状腺癌です。
ビーグル、ボクサー、ゴールデンレトリバーなどの高齢犬で多くみられます。
甲状腺に腫瘍ができても、甲状腺の機能は正常であることは多く、すぐに症状がみられることは少ないです。そのため、頸部のしこりに気付いて来院することが多いです。
頸部のしこりが大きくなると、咳が出る、呼吸が苦しい、食べ物を飲み込みにくい、鳴き声の変化などの症状が出てきます。
頸部のX線検査,超音波検査や,しこりに針を刺して細胞を評価することで診断していきます。
甲状腺腫瘍は両側にみられることも多いため、反対側の評価も大切です。
超音波画像 頸部において血流のきわめて豊富な腫瘤であったため甲状腺が強く疑われた。 |
CT画像 矢印では右側の甲状腺が腫大しています。 |
次にCT検査を行い,腫瘍が血管内に入り込んでいないか、リンパ節転移や肺転移していないか評価します。
治療法に関しては甲状腺癌の大きさ、周囲の組織との固着性(くっついてしまっているか)の有無、転移の有無などにより異なりますが、第一選択としては外科手術です。
甲状腺腫瘍を切除しているところ |
手術だけでは取り切れない場合には放射線療法、すでに転移をしてしまっている場合などでは抗がん剤などの治療法もありますが、そのような場合の予後は悪いといわれています。
また、手術後は甲状腺ホルモン測定を定期的に測定し、低下が見られたら甲状腺ホルモン剤の投与が必要になります。
甲状腺癌は最初に診断がついたときにはすでにリンパ節や肺に転移していることもあり、早期発見が重要になってきます。日頃から首の周りもさわり、しこりがないか気にしてみてください。そして異常に気が付いたら動物病院にご相談ください。