今回は鼻腺癌についてお話します。
鼻腺癌は鼻腔内に発生する悪性腫瘍です。
鼻腔内に発生する腫瘍は他の腫瘍と比較すると非常にまれですが、悪性腫瘍であることが多いのが特徴です。犬の鼻腔内腫瘍で最も多いのが鼻腺癌です。
鼻腺癌の症状は、鼻出血、鼻汁、呼吸困難、顔面変形、くしゃみ、逆くしゃみ、眼脂・流涙などです。薄い血液混じりの膿性鼻汁や鼻出血を伴う鼻汁が、片側の鼻の穴から、もしくは最初は片側で徐々に両側の鼻の穴から出るようになります。抗菌薬で治療したときに、一度は症状が改善しますが、またすぐに再発してしまいます。他の臓器に転移することは比較的少ないですが、局所で徐々に増大し、鼻腔から脳へと至れば神経症状を示す場合もあります。
X線検査では鼻炎との鑑別は困難です。鼻腔内が白くみえる(透過性低下)だけの場合も、骨が溶けている場合もあります。
鼻腺癌を診断するには、全身麻酔下でCT検査をして、鼻の穴からストローを用いて生検をします。CT検査では鼻腔内に充実性の病変がみられ、腫瘍の進行度によっては骨の破壊や眼窩への浸潤がみられます。
治療法は放射線療法が第一選択となります。鼻腺癌は位置的にも外科手術が困難であり、抗がん剤が効きにくい腫瘍です。放射線治療だけをする場合と外科手術をしてから放射線治療をする場合で治療効果が変わらないといわれています。
右側鼻腔内に充実性の構造が認められ、骨が一部融解しています
放射線治療後、右側鼻腔内にあった構造物が消失し、黒く抜けて見えます
放射線照射後に症状が改善しCT検査で鼻腔内腫瘍が消失したようにみられても、完全に治ることは難しく、再発することもあります。
症状がくしゃみ・膿性鼻汁など鼻炎と似ていることもあって、家で様子を見ているという方もいらっしゃるかもしれません。しかし中高齢の犬ではその背景に腫瘍が隠れているということもあります。気になる症状があれば動物病院にご相談ください。