今回は椎間板ヘルニアについて話したいと思います。
そもそも「ヘルニア」とは、体内の組織や器官が、本来あるべき場所から飛び出てしまった状態をいいます。臍に穴があり腹部の組織が飛び出してしまった状態は「臍ヘルニア」、腸管やお腹の中の脂肪等が鼠径部(股の部分)から飛び出してしまった状態は「鼠径ヘルニア」、事故などで横隔膜が破れて腹部臓器が胸部へはみ出してしまった状態は「横隔膜ヘルニア」といいます。
椎間板は、背骨と背骨の間にありクッションのような役割をしていますが、それが脊柱管(脊髄が走行しているところ)に飛び出ることにより、脊髄を圧迫している状態を「椎間板ヘルニア」といいます。(下図参照)
椎間板ヘルニアの症状は、発症部位と重症度によって様々です。頸部椎間板ヘルニアでは、首の痛みや、重症だと前足と後ろ足に麻痺がでることもあります。胸や腰部の椎間板ヘルニアでは、背中や腰の痛みや、重症だと後ろ足の麻痺などが起こったり、排便・排尿の困難などがになることがあります。
犬種的にはミニチュアダックスフンドが最も多いですが、コーギーやフレンチブルドッグ、トイプードルなどの犬種でも起きます(その他の犬種でも起きます)。
当院に来院した、椎間板ヘルニアにより後肢麻痺を呈したミニチュアダックスフンドの症例を紹介させていただきます。
この症例は急に後ろ足が麻痺したとのことで来院されました。症状、犬種、発症状況などから、椎間板ヘルニアが疑われ、CT検査を行いました。椎間板物質が脊柱管内へ脱出し、脊髄が圧迫されていました。
治療の方法はいくつかありますが、圧迫の程度によっては手術で圧迫を解除する必要があります。この症例では脊髄が大きく圧迫を受けているため、手術を行いました。
片側の椎弓を切除した3DCT画像と、突出した髄核を除去しているところの写真です。
無事手術は終了しました。手術後、できるだけ安静に過ごしてもらいます。
その後はリハビリを行い、この症例は術後1週間で歩行可能となり、その後も徐々に改善し、今ではしっかり歩行ができるようになりました。(椎間板ヘルニアによる脊髄の障害の程度により後遺症が残る可能性があり、場合によっては手術を行っても歩けないこともあります。)
段差などをできるだけ避けるなど、できるだけの予防はしたほうがいいですが、完全に予防できる方法はありません。発症した場合はできるだけ早い対応が必要になりますので、麻痺などの症状がでた場合には、早めに病院にかかりましょう。