犬の消化管腫瘍②

針を刺す検査では診断がつけられませんでしたのでお腹をあけて手術することになりました。

 

以下、手術中の写真がでてきますので、苦手な方は注意してください。

 

 

 

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お腹をあけたところ腸の部分に固い腫瘍ができているのが確認されました。

 

 

 

腫瘍ができている腸ごと切除して、正常な腸同士を繋げました。

 

 

切除した腫瘍の部分です。

 

 

切除した腫瘍を病理検査に出したところ「未分化肉腫」との診断でした。

「未分化」肉腫のためどこの組織が元となって発生したのかはわかりませんでしたが、病理検査では腫瘍は取り切れているとの結果でした。

術後は定期的な血液検査・超音波検査で再発がないかチェックしていきます。

 

獣医師:清水

犬の消化管腫瘍①

犬の小腸に発生した腫瘍について今回は執筆させていただきます。

犬の小腸に発生する腫瘍として一番多いものは腺癌、次にリンパ腫が多いです。他にも平滑筋肉腫、平滑筋種、消化管間質腫瘍(GIST)などがあります。

消化管にできる腫瘍の多くが、治療の第一選択は手術になることが多いです。ただし、例外として「リンパ腫」に関しては抗がん剤が良く効くタイプの腫瘍のため、抗がん剤治療がメインになってきます。

 

消化管に腫瘍を見つけた場合、まずは超音波を使ってお腹に針を刺して細胞をとってくる細胞診という検査を行いどういう腫瘍が疑われるかを調べます。

 

今回の子はもともと下痢気味の症状が続いていましたが、最近下痢の頻度が増えてきたということで来院し、検査をしたところ腸に腫瘍がみつかりました。

 

 

超音波ガイド下で針をさしましたが、診断につながるような腫瘍の細胞はとれませんでした。

そのため、診断・治療をかねて外科手術にて切除することにしました。

(②に続きます)

 

獣医師:清水

 

 

犬の肥満細胞腫

犬の皮膚の下にできた肥満細胞腫を手術しましたので紹介させていただきます。

肥満細胞腫はわんちゃんの皮膚にできることが多い悪性腫瘍ですが、見た目は小さくそこまで悪いように外観をしていないこともあります。

この子は右後ろ足に柔らかいしこりがあるのを飼主さんがみつけました。しこりに針を刺したところ肥満細胞腫という悪性の腫瘍が疑われたため、手術することになりました。

 

肥満細胞腫の治療は手術が第一選択になりますが、注意しなければいけないのが手術の切除範囲です。悪性度が高いほど周囲への組織へのガン細胞の浸潤が起こりやすいため、悪性度が高い可能性を考慮して広く切除することが一般的には推奨されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、手術の写真があります

 

手術前に毛刈りを飼った状態です。内側の黒い円の範囲が腫瘍になります。外側の円は手術で切除する範囲です。

 

 

 

手術後の写真です。切除範囲を広めにとりしっかりと切除しました。

 

腫瘍の病理組織学的検査の結果はやはり肥満細胞腫でした。検査の範囲では腫瘍は取り切れていたため経過観察としました。

 

 

獣医師 清水

 

 

 

犬の肝臓腫瘍

今回は、犬の肝臓にできた大きな腫瘍を手術したので紹介させていただきます。

 

以前から定期的に見ていた血液検査で肝臓の数値の上昇がみられたので超音波・CT検査を行ったところ肝臓に8cm程の腫瘍がみつかりました。(黄色で囲んだところが腫瘍です)

 

検査の結果から悪性の可能性が考えられたので手術を行いました。

 

 

以下、手術中の写真です。

 

 

 

 

お腹をあけると大きな腫瘍がすぐにみえました。

 

 

切除した腫瘍と切除後のお腹の画像です。肉眼的にしっかりと切除できました。

病理検査の結果はやはり悪性の「肝細胞癌」でしたが、しっかり取り切れているとのことでした。

この子のように塊で出来るタイプの肝細胞癌は完全切除ができた場合の予後は比較的良好であることが多いです。

 

肝臓は腫瘍ができたとしても症状がでにくい臓器ですので、中高齢になったら定期的な健康診断を受けることをおススメします。

 

 

獣医師:清水

骨肉腫の治療について①

こんにちは!前回は骨肉腫という病気の概要について説明しましたが、今回は治療についてです。

まず骨肉腫の治療の第1選択は「断脚」になります。つまり腫瘍がある部分の手足を1本丸ごと切除します。

「断脚」と聞くと飼主さん的には「足を切除するなんてかわいそう」「残った足で上手く歩けるのか心配」などといった心配もあり手術に対して抵抗を感じる人も多いと思います。

 

そんな飼主さんの不安・疑問に対して説明させていただきます。

①なぜ断脚が第1選択なの?

骨肉腫は痛みが非常に強い。。

骨を進行的に破壊していくため、他のガンより痛みが非常に強いです。強い痛みが続くことで元気食欲が低下してしまい、徐々に全身状態が悪化してしまうことが多いです。

痛み止めの薬やフェンタニルなどの麻薬性鎮痛剤で対処することもありますが、最終的にはそれらも効かなくなってしまうくらい強い痛みになってしまいます。

この強い痛みを取り除いてあげるには、断脚を行い原因となっている腫瘍ごと足を取りきるのが最も効果的な方法になります。

 

抗がん剤単体での治療はあまり効かない

骨肉腫は抗がん剤単体の治療は効果が低く、痛みをコントロールすることも難しいです。

(※断脚をした後に抗がん剤を実施することに関しては延命効果が認められています)

 

②断脚したことで日常生活を上手くすごせるか心配。。

わんちゃんは人間と違って4足歩行の動物です。

断脚を実施して3本足になった場合でも、残りの足が健康であればほとんどの子たちが1週間程で補助をした状態での歩行が可能になります。さらに1ヶ月もたてば多くの子が補助なしで日常生活に支障なく歩くことができます。

 

③3本足になってしまうと見た目が可哀そう。。

動物の場合は足がなくなった自分の姿を見て悲壮感を感じることはまれです。

人間である飼い主さんからみると可哀そうと感じるかもしれませんが、本人たちにとっては痛みの元がなくなるので「生活の質(QOL)」があがり手術前より活動的になることが多いです。

 

断脚は大きな手術になり、飼い主さんも決断に悩むことがあると思います。手術をするかしないかは飼い主さんの考え方やわんちゃんの状態にもよりますが、積極的な治療をしたい/本人の痛みをとってあげたいと思う場合は有効な治療方法です。

 

獣医師:清水

 

 

 

 

 

 

 

 

犬の骨肉腫

こんにちは。今回は大型犬の子に多い骨の腫瘍「骨肉腫」について紹介させていただきます。

 

骨肉腫は発生する場所・犬種に特徴があり、ゴールデン・レトリバー、ジャーマン・シェパード・ドッグなどの大型犬に多いです。

 

骨肉腫の75%は四肢に発生するといわれており、

・前肢のほうが多い(後肢の2倍)

・肘から遠い部位(上腕骨近位・橈骨遠位)

・通常、関節を超えて発生はしない

 

という傾向があります。

 

悪性度は高く、遠隔転移を起こしやすいため、発見時にすでに肺などに転移していることもあります。

 

症状としては、主に跛行(びっこ)で発見されることが多いです。進行すると強い痛みを伴う為、食欲・元気の低下がみられることもあります。

 

下の写真は当院で診断した骨肉腫のレントゲン写真です(左側:腫瘍側、右側:正常肢)

この子は左前肢の上腕骨に腫瘍ができていました。で囲っている部分が腫瘍によって破壊された骨の部分です。

 

 

大型犬でびっこが長く続く場合は早めに動物病院を受診しましょう!

次回は骨肉腫の治療について解説させていただきます。

 

獣医師:清水

犬の高カルシウム血症 ~続編~原発性上皮小体機能亢進症と上皮小体腫瘍

こんにちは!前回の高カルシウム血症のお話から派生して、今回は発性上皮小体機能亢進症について解説させていただきます。

原発性上皮小体機能亢進症とは、喉にある上皮小体という部分から上皮小体ホルモンが過剰に分泌されることで起こります。

上皮小体ホルモンには血液中のカルシウムを上げる作用があるので、この病気になると高カルシウム血症が引き起こされます。

原因としては上皮小体腺腫という良性の腫瘍が最も多いです。その他にも腺癌・過形成なども報告されています。

 

 

原発性上皮小体機能亢進症による高カルシウム血症が見られたワンちゃんのエコー画像です。(白矢印で示している部分が上皮小体)

別件で具合が悪くなったときの血液検査で偶然高カルシウム血症が見つかりました。

上皮小体:右側
上皮小体:左側

この子の場合は左側の上皮小体が右側より大きくなっていました。

原発性上皮小体機能亢進症の根本的治療は外科手術で大きくなっている上皮小体を切除することです。

しかしながら、術後に一時的な低カルシウム血症になることもあり、場合によってはカルシウムの管理が長期に及ぶケースもあります。

高齢・高カルシウム血症がそこまで重度ではなかったこと・無症状・上皮小体の腫大がそこまで顕著ではなかった為、まずはカルシウムを下げるお薬を飲むことによる内科療法を選択しました。

現在、飲み薬のみでカルシウムはほぼ正常範囲に維持ができています。

犬の高カルシウム血症

こんにちは!

今日はわんちゃんの高カルシウム血症の話をさせていただきます。

カルシウムというと骨を丈夫にするための重要な要素ですが、高すぎても低すぎても体に悪影響を及ぼします。

高カルシウム血症になったときの症状は食欲不振、元気消失、多飲多尿などがありますが、原因によっては全く症状を示さない子もいます。

ですので健康診断で偶発的に発見されることも多いです。

 

わんちゃんの高カルシウム血症で発生率が多いものは「原発性上皮小体機能亢進症」と「悪性腫瘍」です。

 

悪性腫瘍の場合は腫瘍本体からカルシウムを上昇させるホルモンがでることで高カルシウムになります。この場合は悪性腫瘍が原因ですのでわんちゃんは具合が悪くなることが多いです。

 

一方、「原発性上皮小体機能亢進症」の場合は「上皮小体」というカルシウムを調節する臓器の機能が働きすぎることによりカルシウム上昇作用のあるホルモンが大量に分泌され高カルシウム血症となります。この病気が原因で高カルシウム血症になっている場合は、本人の調子はそこまで悪くない・無症状であることも多いです。

 

上皮小体の機能が亢進してしまう根本的原因は上皮小体の「腫瘍化」「過形成」があります。その中でも「上皮小体腺腫」という良性の腫瘍が一番多い原因です。

次回の更新ではこの「原発性上皮小体機能亢進症」についてもう少し詳しくお話していきます!

                                    

  獣医師:清水

                                          

うさぎの子宮疾患

今日はウサギさんに多い病気のひとつ、血尿についてお話ししようと思います。

みなさんは血尿と聞いた時、どんな病気を思い浮かべるでしょうか。

膀胱炎?尿石症?

もちろん間違いではありません。

ウサギさんは高カルシウム尿(白く砂状のどろっとした尿)をする個体が多く、原因としては食べているものの影響であったり水分の摂取不足からくることも少なくないのですが、場合によっては排尿をしづらくさせてしまう病気(膀胱炎、尿石症など)によって尿が濃縮されすぎてしまうことも原因のひとつで、時には結果として血尿に至るケースも見受けられます。

また食べているものの影響という点では、ウサギさんはご家庭によって食べているものの幅が広く、ポルフィリン等の色素の尿中への排出の程度によって、薄黄色だったり褐色だったり暗赤色だったりと個体による幅が大きいです。場合によっては視覚的な判断だけでは私たちでも判断に困るケースもあります。

しかし今回お話させて頂くのはこれらのどちらでもなく、子宮疾患による血尿です。

ワンちゃんネコちゃんの飼主様からすれば血尿から子宮疾患というのはなかなか頭の中で直結しづらいとは思います。しかしウサギさんに関しては血尿で来院された患者さまのうち、検査を経て最終的に子宮疾患という診断になるケースは非常に多く、また2歳を超えた成雌ウサギさんにとって子宮疾患というのは極めてメジャーな病気となっています。

 原因としてはっきりとしたことは分かっていませんが、動物種的な特徴がおおいに関係しているのではと言われています。ウサギさんは性周期・妊娠期間ともに短く、自然界においてはおよそ半分の時間を妊娠した状態で過ごしているとも言われており、飼育下で妊娠・出産を伴わない場合、ほとんどの時間を発情期として過ごすことになります。これによる性ホルモンの影響で子宮疾患に至ると考えられています。

では子宮疾患になってしまった場合、どのような症状が出るのか、おうちでどんな仕草が見られたら来院すべきなのか、というところが気になるかと思います。

ここまでの流れで想像はついているかもしれませんが、やはり血尿です。そしてそれ以外の症状に乏しいのも特徴の一つです。

泌尿器からの出血であれば頻尿や排尿痛を伴うのが一般的ですが、生殖器の問題であれば元気や食欲がなくなる、お腹が張ってきた、乳腺が目立つようになった、お水をよく飲むようになった、といった何かしらの症状が見られる子はごく一部です。

子宮疾患と一口に言ってもその中には子宮内膜過形成、内膜炎、感染症、腫瘍など色々なものが含まれます。そしてそのどれもが治療法としては外科手術での子宮卵巣摘出になってしまいます。

以下に、様々な疾患により子宮卵巣摘出を実施した症例の写真をいくつか紹介させて頂きます。

こちらは超音波検査で子宮内部に液体の貯留が認められたケースです。

こちらはCT検査で左右子宮の腫大が認められたケースです。


血尿のほか症状に乏しいため来院するのが遅れてしまったり、なかなか手術に踏み切れなかったりで発見時よりも状況が悪化してしまうことも珍しくない病気なので、おうちの子に血尿が見られたらまずは早めにご来院頂けるとと思います。


陰睾について

 

みなさんは、陰睾(停留睾丸、潜在精巣)をご存知でしょうか。
陰睾とは、両側または左右どちらかの精巣が陰嚢内に下降していない状態のことをいいます。
実は、精巣というのは生まれた時から体の外にあるわけではありません。通常、精巣は生まれた直後はお腹の中にあり、生後1~2ヶ月までに成長とともに陰嚢内に下降していきます。下降する、というのはなかなかイメージしづらいかもしれませんね。
下の図をご覧ください。

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茶色が腎臓、クリーム色が尿管と膀胱、赤色が精巣を示しています。胎生期(母親のお腹の中にいるとき)には腎臓の後ろあたりにあった精巣は、徐々に尿管にそって膀胱の方へ移動し、最終的には膀胱を通りこして、陰嚢という袋に包まれて体外に収まります。なぜ移動するのか?それは、精子にとって体内環境が高温であり、体内に精巣があると精子がうまく育たないためです。精巣を体外に移動させて温度を下げてあげることで、精子が正常に作られるようにしているのですね。
ところが、男の子のワンちゃんのの1~2%で、この精巣の移動がどこかのタイミングで妨げられ、精巣がお腹の中に残ってしまうことがあります。この状態がはじめに述べた「陰睾」というものです。陰睾は、一般的に去勢手術を考えるタイミングでの受診時に、陰嚢を触診し精巣が触れないことをもって診断します。先に、精巣は1~2ヶ月で陰嚢内に収まると述べましたが、中には体外に降りてくるのが遅い子もいるために、確定診断ができるのは生後半年ごろと言われています。
陰睾は精巣が体内にとどまっている以外は正常なワンちゃんとなんら変わらないため、すぐに体調不良につながることはありません。しかし、陰睾と診断された場合、私達獣医師は去勢手術を強くおすすめします。それは、体内に残った精巣をそのままにしておくと将来その精巣が腫瘍化するリスクが10%ほど増加すると言われているためです。

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上は陰睾の精巣が腫瘍化した症例の写真です(左:陰睾、右:正常)。

今回は陰睾についてお話しました。陰睾は診断されたからといってすぐに治療が必要な病気ではありませんが、そのままにしておくと腫瘍化することで命に関わる可能性があります。このため、去勢手術を考えていないワンちゃんも、健康診断などで病院を受診し、陰睾がないことを確認しておきましょう。