尿管結石症におけるSUB System設置手術

犬、猫ともに、尿路結石症は比較的多い疾病です。その中でも、今回は、尿管結石症について取り上げてみたいと思います。
まず、“尿管”と“尿道”の違いはわかりますか?尿管とは、腎臓と膀胱をつなぐ管で、尿道とは、膀胱からおしっことして排泄されるときに通る管のことを言います。
尿管結石症とは、その名の通り、尿管に結石がつまってしまう病気です。尿管に結石がつまってしまうと、腎臓で作られた尿が膀胱まで送れなくなり、尿管内で渋滞を起こしてしまいます。その結果、尿管が拡張し、さらには腎臓内にも尿がたまってしまい、水腎症という病気になってしまう恐れがあります。

CT画像
矢印部分に結石が認められる

超音波画像
腎臓の中に尿が貯留している
(黒い部分が尿です)

この状態を放置しておくと、腎臓に負荷がかかり、腎不全に陥ってしまいます。
では、どうしたらいいのでしょうか?
当院では、尿管結石摘出手術か尿管ステント設置手術またはSUB System設置手術を実施しています。その中で、今回は、一番最新の手術方法であるSUB System設置手術についてご紹介します。

SUB System設置手術とは、Subcutaneous Ureteral Bypass Systemといい、日本語訳すると、皮下尿管バイパスシステムといいます。簡単に言うと、自前の尿管を使用せず、人工の尿管を腎臓から皮下(皮膚と筋肉の間)を通り、膀胱につなげ、その人工尿管を通って尿を膀胱に送る手術方法です。

腎臓に人工尿管を設置している写真 膀胱に人工尿管を設置している写真
皮下にポートを設置している写真 手術後のレントゲン画像

この手術を実施することにより、腎臓から膀胱へ尿を送ることが出来るようになります。また、上の写真にあるポートと呼ばれるものを皮下に設置することにより、麻酔をかけずに、人工尿管のメンテナンスを行うことができます。

術後の腎臓の超音波画像
腎臓の中の構造がよく見えるようななりました

腎臓は、左右どちらかの尿管がつまってしまっても、反対側の腎臓が頑張ることにより、おしっこはしっかりと出ていて、なかなか気づけない場合があり、食欲の低下や嘔吐といった、腎臓病とは一見結びつかないような症状しか示さないことがほとんどです。
そういった症状が見られた場合は、一度お近くの動物病院までご相談ください。