膝蓋骨とはいわゆる「膝のお皿」のことです。
正常な子は、このお皿が滑車の上で滑って膝の曲げ伸ばしをしているのですが、内側または外側にお皿がずれて脱臼をおこしている状態を「膝蓋骨脱臼」といいます。
小型犬では内側に脱臼する「膝蓋骨内方脱臼」、大型犬では外側にずれる「膝蓋骨外方脱臼」することが多いです。
膝の正常な位置 | 正面からの 正常な膝蓋骨の位置 |
正面から膝蓋骨が 内側に脱臼している |
上の図の『○』は膝のお皿の位置を示しています
この膝蓋骨脱臼の一番の問題点は「痛み」です。
よく来院されている方は「家の中で遊んでいたら≪キャン≫と鳴いたんです・・」「気づいたら後ろ足をあげてケンケンしはじめて・・・」といったことで来られます。
この膝蓋骨、生まれつき外れやすい子や成長期に外れてしまう子がいます。
脱臼の程度はさまざまあるのですが、脱臼しても自然に元の位置に戻る子や、戻らない子、なかには常に膝蓋骨が脱臼したまま生活している子もいます。
膝蓋骨脱臼の場合、内服薬のみで治療するのか、手術して整復するのかをその子の年齢や脱臼の程度により選択しなければなりません。
例えば年齢が若くで脱臼している子は、成長に伴って骨の変形がおこる可能性があります。もちろん骨が変形しても痛みを伴わないケースもあるのですが、自力で膝を伸ばすことができなくなる可能性もあるので手術を検討したほうが良いでしょう。
また、脱臼することで痛みが頻繁にでてくるような子も手術を考慮してあげる必要があります。
手術の方法として、第一に膝蓋骨を収めている滑車溝の溝を深くし、膝蓋骨がはずれないようにする方法があります。またこの他にも関節包を縫い縮めたり、緊張した筋肉を切開するなど膝蓋骨が溝から落ちないような手技を組み合わせておこないます。
正常な子では、この溝の上に膝蓋骨がのっています。 |
手術ではこの溝を削って深くし、膝蓋骨をはずれにくくします。 |
手術後の様子です。 |
このような膝蓋骨脱臼の危険を避けるためにも普段から、膝になるべく負担にならないような生活環境を整えてあげるといいでしょう。たとえば、部屋の床のフローリング部分は滑りやすいので、フロアマットをひいてあげると膝の負担は軽減できます。
普段の生活の中で「歩き方がおかしい」「急に≪キャン≫と鳴いた」などあれば早めにご相談いただければと思います。