犬の多中心型リンパ腫

今回は、犬のリンパ腫についてご紹介したいと思います。


リンパ腫とは、リンパ球という免疫に関わる細胞が腫瘍化したものです。

リンパ球はリンパ管や血管を介して体中を巡っているため、リンパ腫は体中のどこにでも発生する可能性があります。

リンパ球が無制限に増えるため、体中のリンパ節が炎症に関係なく腫れたり、皮膚や腸に病変ができたりします。

 

リンパ腫は腫瘍のできる場所によって、多中心型、前縦隔型、消化器型、皮膚型、節外型に分類されます。

今回はその中から、多中心型リンパ腫の症例についでご紹介します。これは、犬のリンパ腫全体の約80%に認められる最も多いタイプで、体表にあるリンパ節が1つあるいは複数腫大します。

【犬の触知可能な体表リンパ節】

 

今回の症例は、10歳♂のシーズーちゃんです。トリミングの際に首の一部(右の浅頸リンパ節)が腫れていることに気づきました。
この時、元気や食欲はあり、このリンパ節の腫脹以外の症状はありませんでした。

リンパ節に細い注射針を刺し(針生検)、針の中に入ってくるわずかな細胞を顕微鏡で観察する検査(細胞診)を行いました。この検査は簡単に麻酔なしで行うことができます。採った細胞を外部の検査センターに出したところ、高悪性度のリンパ腫が疑わしいとのことでした。

犬の多中心型リンパ腫は、悪性度やリンパ腫の種類(T細胞orB細胞)、転移の有無によって細かいステージ分類をすることができます。

 

【犬の多中心型リンパ腫のステージ分類】


この症例は、CT検査も行い、さらに腫れたリンパ節を切除し病理検査にだすことで、
B細胞性の高悪性度リンパ腫のステージⅠaということが分かりました。

【3D CT画像:青く囲ってあるのが腫れた浅頸リンパ節です】

 

治療は化学療法(抗がん剤)が第一選択になります。複数の抗がん剤を組み合わせた、多剤併用療法を行います。2つ以上の薬剤を組み合わせることによって、いろいろな角度からリンパ腫を攻撃し、治療効果を高めます。

この症例は、1週間に1回の頻度でおよそ半年間の抗がん剤の通院治療を行いました。治療が終わった際にリンパ節の腫脹は認められなかったため、その後は月に一回様子をみていましたが、3か月後に今度は右の下顎リンパ節が腫れてきてしまい、抗がん剤治療を再開しました。今も抗がん剤を続けており、リンパ腫が発見されてからもうすぐで2年がたちます。

リンパ腫が発見される段階にもよりますが、多中心型の高悪性度リンパ腫は、進行がはやく、無治療の場合は余命は1~2ヶ月といわれています。抗がん剤治療を行った場合、生存期間中央値は1年程度といわれていますが、今回の症例のように2年もしくはそれ以上存命できる子もいます。

 

今回は犬の多中心型リンパ腫について紹介させていただきました。

他の型のリンパ腫についても今後ご紹介できたらと思います。